藍色の空間

魂にメスはいらない

『魂にメスはいらない』

つまずくこともある。病むこともある。自分の内にありながら、どこかとらえどころのない人間の心。“魂の医者”カール・グスタフユングがひもといた人間心理の謎を、日本を代表する“こころの専門家”と“こころの表現者”が、深い独自のまなざしでたどり、見つめなおす。生を掘りさげ、夢を分析し、死を問いなおす2人の言葉のなかに、これまで気づかなかった「自分」が見えてくる、魂の根源に語りかける名講義録。(Amazonより)

 

河合隼雄先生と詩人谷川俊太郎氏との対談形式による名著。

ユングの心理学の専門用語もたびたび出てくるので、予備知識が少しあった方が読みやすいかもしれないが、それがなくとも河合先生の言葉の数々に新たな発見と勇気とをもらえた。

付箋をつけた個所を記しておく。

P56 人の中核にある死への恐怖というものの治療は不可能なのではないか、と問われて。

そんなのは治ることはないでしょう。だからそれを治すなどということはなく、いかに抱きしめていくかということになります。こっちだって何も解決してるわけじゃないですから、死の恐怖というものを自分の心の中にどのようにおさめるかでしょう。

むしろそれが人生の輝きの根本みたいに思いますし、言うなればそれを謳いあげることにその人の人生があるんですから。

P84 普通の人間の自己治癒力について

普通は、それが適当にうまく働いているわけです。だから深く悩むこともなく深く治ることもなく、みんな生きているわけでしょう。いわば普通の人間は自分で自分なりの治療行為をしているわけですね。つまりすってんてんになるまでパチンコをするとか、途方もない大金を競馬で使ったりするとか、それなりにみんな治るための儀式をやっているんですね。 

P117 「規格を超えたコミュニケーション」について聞かれて

しかし、それぐらいばかげたこを考えてみるファイトがなかったら、人間は変わらないですよ。そういうばかげたこを色々考えて、重なってくるものを言語化し、重ならないものは捨てていくわけです。そのときに、一つのことだけに固執すると、ほかにいろいろおもしろいことがあっても見れないですね。フロイトが言った「フリー・フローティング・アテンション 平等に漂える注意力」を持ってみていないとだめなんです。

 P244 エモーショナル・インテグレーションについて

感情の中にはいま言われたように相反したものがある。それが全体として統合されていくことをエモーショナル・インテグレーションと言うんですが、これができている人は強いし安定感があるんです。ところがエモーショナル・インテグレーションが行われようとする過程で、失敗することが多い。なぜかというと、みんなネガティブな感情を抑えようとしすぎるんです。特に母親とか学校の先生とかがそうです。(中略)僕はそういうネガティブな感情もあるものはあるとして率直に受け入れる方が、全体としてのインテグレーションがうまくいくんじゃないかと思っているんです。だからネガティブなものもポジティブなものも同時に働かせながら、どう全体として統合するかが問題なんじゃないんでしょうか。

P265 自我の統合について

われわれのいまの社会にある統合というのは、自我による統合でしょう。それをさらに深めた次元の統合への動きが背後にないといけない。ところが実際には自我の次元でのみ破壊が行われているために、いたずらに破壊のための破壊を標榜するいわゆる前衛芸術に接すると不安を押し売りされたような感じになって、むしろ昔のほうがよかったということになっているような感じがしますね。 

P299 自分がどのようなタイプであるとか自覚していたほうが、生きやすいか?と問われて

生きやすいというより、そのほうがおもしろいですね。それと、自分と違うタイプの人をきらいになることからずいぶん救われるんじゃないでしょうか。

 

 

魂にメスはいらない ユング心理学講義 (講談社+α文庫)

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